③保護命令の申立
保護命令の種類
保護命令は、裁判所から加害者に対して出されるもので、被害者への接近禁止命令、自宅からの退去命令、電話等の禁止命令、被害者の子への接近禁止命令、被害者の親族等への接近禁止命令があります。
これらを事案に即して使い分けて、申し立てることがポイントとなります。
被害者への接近禁止命令
被害者への身辺へのつきまといや、被害者の住居、勤務先等付近でのはいかいを禁止するものです。
この命令の効力は、6か月間です。
退去命令
加害者を自宅から立ち退かせるものです。
例えば、自分や子どもの荷物を持ち出したいけど、暴力夫が怖くてできない、といった場 面で利用します。この命令の効力は、2か月間です。
電話等の禁止命令
これは、加害者が以下の行為をすることを禁止するものです。
- 面会を要求すること
- 被害者の行動を監視していると思わせることを告げること
- 無言電話をかけること
- 緊急やむを得ない場合を除いて、連続して電話やFAX、メールをすること
- 緊急やむを得ない場合を除いて、午後10時から午前6時までの間に電話やFAXをすること
- 汚物や動物の死体等を送付すること
この命令は、接近禁止命令が発令されていることが条件で、効力は、接近禁止命令の有効 期間が満了する日までです。
被害者の子への接近禁止命令
この命令は、被害者が監護している子どもを加害者が連れ去ろうとしているような場合に申し立てるものです。
この命令は、接近禁止命令が発令されていることが条件で、効力は、接近禁止命令の有効 期間が満了する日までです。
被害者の親族等への接近禁止命令
この命令は、加害者が被害者の実家や、職場に押し掛けて迷惑をかけることなどが予想される場合に申し立てるものです。
この命令は、接近禁止命令が発令されていることが条件で、効力は、接近禁止命令の有効 期間が満了する日までです。
裁判所への申立てに際し、次のいずれかが必要となります。
保護命令の形式的要件
- 申立ての前に、配偶者暴力相談支援センター又は警察に対して、相談し、援助や保護を 求めていること
- 公証人面前宣誓供述書(申立人のDVの状況等の供述を記載して公証人の認証を受けた書面)を申立書に添付していること
通常は、1.の方法が取られますが、この場合、申立書には、次の事項を記載します。
- 配偶者暴力相談支援センター又は警察の名称
※「福岡県配偶者暴力相談支援センター」「博多警察署生活安全課」といった程度の記載で足ります。 - 相談し、又は援助若しくは保護を求めた日時及び場所
- 相談又は援助若しくは保護の内容
※「夫から受けた暴力」などの簡潔な記載で足ります。 - 相談又は申立人の求めに対して執られた措置の内容
※「一時保護」、「保護命令についての情報提供」などの記載で足ります。
申立ての方法
保護命令は、被害者しか申立人となれません。親族や友人が代わりに申し立てることはできません。
申立書に証拠書類を添えて、相手方の住所地を管轄する地方裁判所、申立人の住所又は居所の所在地、あるいは過去の暴力行為が行われた土地を管轄する地方裁判所に提出します。
保護命令は、単なる調停と異なり、申立書の記載や証拠の提出方法等、専門的な知識や経験がなければ難しいのが現状ですので、DV問題に詳しい弁護士へ依頼されることをおすすめします。
手続
審理期間
通常、裁判は1年ほどかかりますが、保護命令は迅速に審理されます。
個々の事案にもよりますが、平均的な審理期間は、2週間ほどのようです。
審尋
通常の場合、まず、申立人本人(弁護士が付いている場合はその弁護士)との面接(審尋)が行われます。
そして、DVの状況について、詳細が聴取されます。
保護命令は、相手方(加害者)の行動の自由を制限することになるので、原則として、口頭弁論又は相手方が立ち会うことができる審尋を経なければ、発令されません。
そこで、通常の場合、裁判所が相手方に呼出状と申立書等の写しが送付され、審尋期日に裁判官が相手方から事情を聴取します。
申立人本人や弁護士は、相手方の審尋期日に同席できますが、申立人本人は、安全確保の観点から出席しないほうがよいでしょう。
決定
裁判所は、審尋の結果、事前相談先機関からの回答及び証拠等を総合して判断し、保護命令の申立を認容する決定(保護命令)又は、申立てを却下する決定を下します。
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