モラハラ夫と別居の際、預貯金や家財道具を持ち出してもよい?
一定の範囲であれば問題ありません。
この問題について、当事務所の弁護士が解説します。
別居の際に、預貯金や家財道具を持ち出したとしても、一定の範囲では問題になりません。
法的には、財産分与として認められる蓋然性のある範囲での持ち出しは、違法ではないとされています。
実際に、訴訟で争われたケースを2つご紹介します。
横浜地裁 昭和52年3月24日判決
この事案では、妻は、収入が少なく、家事・育児を担っていたけれども、家を出るに際し、婚姻中に蓄えた夫名義の預金300万円の半分である150万円を自分名義に変えて持ち出しました。
これに立腹した夫が、損害賠償請求を提起しましたが、結論として棄却されました。
そこでは、妻は、預金の準共有者として、2分の1の持分を主張しうることが指摘されています。
東京地裁 平成4年8月26日判決
この事案では、離婚訴訟係属中の妻が夫名義の国債、ゴルフ会員権、現金を持ち出して消費しました。この消費した行為が、不法行為に該当し、妻は損害賠償義務を負うのかが争われました。
東京地裁は、妻が持ち出したものが、実質的な夫婦の共有財産であるときには、その財産の一部を持ち出したとしても、その持ち出した財産が将来の財産分与とかんがえられる対象や範囲を著しく逸脱するなど、他方を不当に困惑させるなど不当な目的をもたない限り、違法性はなく不法行為にならず、最終的な帰属は財産分与の際に決すべきとしました。
このように、別居の際に、預貯金や家財道具を持ち出したとしても、それが財産分与で認めうる範囲であれば、不法行為などの違法性がある行為にはなりませんので、安心してください。
ただし、相手方の生活が困るような多額の財産や家財道具を持ち出すと、上記の裁判例の立場でも、場合によっては、違法性を帯びてきますし、何より、感情的な対立が深まり、離婚協議そのものが難航することが予想されます。
あくまでも、財産分与の観点からみて適正と思われる金額にとどめるべきです。
とはいえ、財産分与については法的な判断が必要です。
どの程度の持ち出しであれば許されるのかについては、離婚問題に詳しい弁護士に相談しましょう。
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